2011年3月30日

ニュースの解釈

日本国外で働いている日本人の友人がブラジル人の同僚に「日本政府はモノはいらないが、金を送れ」と言っているが、本当か?と聞かれたとのこと。SNS上でやりとりされた会話の中で次の記事が引用された。本当に政府がそのようなコメントを出しているかということと、名前の通っている新聞社の記事でも果たして信じることができるのかについて考察してみた。


http://sankei.jp.msn.com/world/news/110324/asi11032417390002-n1.htm
一見良識的に思える産経新聞の記事。
この中には今の日本、これからの日本を守っていく上でとても重要な課題が書かれているように思う。
記事は日本政府の受け入れ態勢の不備により諸外国の善意を無にしていることへの非難を要旨としている。
例として挙げているのが、①規格外の毛布 ②救助犬の入管 ③コメや食料品の輸入拒否の3点。

②と③については、政府の対応に問題はないのではないかと思われる。
たとえ緊急事態とは言え、政府は国民の安全には徹底する義務があり、その義務を全うするために様々な法令を作ってきたわけである。超法規的な措置を取った末に、例えば狂犬病が発生したり、食品汚染が発見されるようなことが起こればそれこそ今回の震災に被災していない大多数の国民にまで二時災害として被害が及ぶ可能性もあり、これだけは食い止める必要がある。
過去にあれだけ中国産の食品に過敏になった国民の反応を思い出してほしい。援助を申し出た国の中には狂牛病や鳥インフルエンザに汚染されている国や地域もあるはずだ。審査を早めるなどの措置は取れたのかもしれないが、この混乱の最中でそれらをスムーズに運ぶことがいかに困難であるかは想像に固くない。

①についても杓子定規さを全面に出して批判を強めるように誘導しているが、記事の中には「すったもんだの末にようやく」の部分が具体的な説明はない。1日だったのか、1週間だったのか。もしかしたら数時間書類上のことで手間取っただけなのかもしれないが、こうして記事に書くと、いかにも頭の固いお役所仕事の部分ばかりが強調されて、そしてそれが記事となり、多数の目に触れてけしからんという声を産んでいく。

産経新聞については過去にもこのようなケースが散見されており、良識の仮面をかぶった扇動的なニュースメーカーだという印象を持っている。”経”という文字が入っているので、どうも日経などと混同しがちであるが、記事作りから言えば経済紙といよりは、サンスポ寄りのバラエティ紙と受け取るべきだと思う。

③の食品にも関わることだが、果たして今の日本で圧倒的に物資が足りていないのは事実なのだろうか。
震災直後には食料が燃料がなく、危機的な状況が報じられていたが、数日前に報道されていたNHKのニュースでは、避難所でインタビューを受ける女性の後ろには毛布が山のように積まれていた。別の町では届けられた物資の山の中から必要な下着を探しだそうと四苦八苦している役場の職員が映されていた。勿論まだまだ流通経路が確保されていない地区には物資の不足もあり得るが、届ける物資自体に不足があるのかという点では、どうもそのような報道はなされていないように思われる。

電気やガスのインフラが整っていない地区もあり、被災者は満足な食事ができているわけではないことは事実であろうが、飢えや寒さからは徐々に解放されてきている時期にあるのだと思う。市町村の役割は生存者や遺体の確認から瓦礫の撤去に重点が移り始めた。道路の復旧が急ピッチで行われ、行政主導のもと役場には日本全国の市町村からプロの職員が派遣されるように整備されてきてもいる。

被災者はこれから失った家、車、家財、衣料品を揃えて行かなければならない。船を買い、畑を耕し、工場を再建して、失われた職も回復していかなければならない。その上で必要になるのは絶対的に資金のはず。国がインフラを整備していくためにも、被災者が日常生活を取り戻す上でも、どうしても必要になってくるのはお金だ。

そうした中で、物資は足りている、これから必要なのは資金だと国が言ったとしてもそれはウソではないのではないかと思われる。
件のブラジル人がどのように情報を入手したのか不明ではあるが、伝聞を繰り返すうちに、日本政府がそのように横柄で傲慢な要求をしたように受け手が理解するようになってしまっていったのならとても残念である。

海外での報道については、バックグラウンドに通じていない稚拙な記者が記事を発信し、それ以上に日本の事情を知らないその国の読者が受信し誤解や誤認を産むこと大いに有り得るわけで、我々海外在住の日本人は間に入って、そうした誤った認識を出来る限り正していくのも役割の一つなのかもしれないと思った。その為にも自身がニュースを正しく冷静に解釈しなければならないと改めて感じた。

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